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ぽっと、明るくなる

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 朝から小止みなく降り続く雪は、先程除けたばかりの道を、どんどん埋めていきます。
12月の大雪の際の、湿った重たい雪に比べたら、はるかに軽いのですが、それでも30分位除雪を続けると、汗びっしょりになります。
屋根の雪もどんどん嵩が増えてきて、もうそろそろ止んで欲しいなぁと恨めしいような気持ちで空を見つめていました。
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 こんなに晴れ間の全くない日は、お客様も外に出にくいだろうと、さみしく思っていましたら、日曜日、そしてレストランも開いているということもあって、数名のお客様の来園があり、ほっとしました。

 帰り際にご夫婦でアンケートを渡してくださったお客様がいらっしゃいました。

 そこには、「いつもは雪いやだなと思うけど、ここに来てきれいだなと思った」とありました。

 最高の誉め言葉です。嬉しくてお言葉を噛みしめました。そして皆さまにも、この喜びをお伝えしたくなりました。

 先程とは全く違って、喜びが舞い降りて来る、そんな風に見えました。

 大いなる自然と同じように、人を救ってくれる人の言葉がある。そんな言葉をお客様からいただける場所で働いていられることに、幸せを感じます。幸せを差し上げなければならないのは、私の方なのに。

 ご来園、本当にありがとうございます。大雪の日に、心はぽっと温かで幸せです。

清水園/ひろ
 

# by hoppo_bunka | 2023-01-29 16:41 | 清水園 | Comments(0)

明日の笑顔を作る

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 未曽有の災害を引き起こした、阪神淡路大震災から28年が経ちました。今朝はちらちらと雪が降り、次第に辺りが白く埋められていきます。鎮魂の思いを深めていくかのようです。
 あの震災が起きた時、テレビの画面から被災地の様子を見て、関西は壊滅的だと思いました。それから28年。多くの方がたの汗と努力により、街は活気ある姿を取り戻し始めています。
 道路や公共施設の整備に関わる方がたの仕事は過酷です。通勤途中に見かける土木作業員の方は、吹き曝しの冷たい雨、風、雪の中も、焼けつくような酷暑の中も、休むことなく仕事を続けていらっしゃいます。その姿を見るたびに、大変だと思うと共に、過酷で 汚れて、危険、というイメージをぬぐい切れないでいましたが、今年ある方の言葉に出会ってから考え方が変わりました。

 「恵まれないひとたちに、少しでも暮らしやすい社会資本をつくりたい、そんな思いでぼくは土木を選びました。」

 人生のリセットを考え始めた時に出会ったこの言葉は、仕事に対する誇りと、豊かな社会を創りあげるために尽くす決意に満ちていて、お前はどんな気持ちで働いて、何か世の中のために貢献していることはあるのかと、問いただされているように感じました。

 自分にできることは、何だろう。今の自分にできる社会貢献って何だろう。復興の担い手になった方がたのように、何に誇りをもって働いているのだろう、と考えさせられました。
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 清水園には大いなる力があります。多くのお客様が来て下さるのは、ここで感じられるお気持ちが、それぞれの方にとって、価値あるものだからでしょう。ここに来てくださった方が、来て良かったと笑顔で帰られること、そのために自分ができることを考えることは、未来の世の中に生きる人たちの笑顔を作ろうと頑張って働いていらっしゃる、土木作業員の方がたと、規模は違うものの、同じものを目指しているのではないかと考えました。

 家庭で、職場で、関わりあう人たちとの触れ合いの中で、その人たちが笑顔になれるような生き方ができたら、と思いました。
社会貢献という大きなことはできないかもしれないけれど、若い方の誇りある美しい生き方を知った今、ハッとして共鳴した胸の高鳴りを、失いたくないと思いました。

 誇りある生き方に共鳴して力を合わせ合った人たちが28年の年月をかけて成し遂げた今の人たちの暮らしを想い、私も自分の暮らしに槌を打ち始めます。

清水園/ひろ

 
 

# by hoppo_bunka | 2023-01-17 13:41 | 清水園 | Comments(0)

リセット

 
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 明けましておめでとうございます。
新年早々、電話線断絶のため、通信環境が整わず、ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
12月に降った大雪ですっぽりと雪に埋もれていた園内は、年明け、特にこの2、3日の暖かな陽射しによって、またたく間に姿を変え、春の趣を見せました。久しぶりに訪れた園内は、あの凍りついた日々をまるで忘れてしまったかのように、木々も枝を拡げています。
 自然の中で生きているものの、逞しさを感じます。

 人目に触れない基礎にこそ、大切に心を込めて全力で取り組む。これは全てのものづくりの基本だと思いますが、木々を見て、新年の決意を新たにしました。
 第2の人生を始めている今、私も、人生をリセットして、新たな自分の基礎となるものを培うことに力を注いでいきたいと思いました。

 それまでは何でも時間に追われて間に合わせることで精一杯でした。時間のかかることは、する余裕がありませんでした。料理でいえば、焼き物、炒め物、揚げ物がほとんどで、煮物や漬物は、専ら義母にお任せでした。最近になって、料理をすることがほとんどできなくなった義母の代わりに、時間のかかる料理にも、ようやくチャレンジするようになって、手間暇をかけたもののおいしさが実感できるようになってきました。
 先日、本館で行われている園芸教室の新年会が大呂菴で行われたのですが、そこで出された野菜料理が全てそうでした。作り手の心が感じられる素材の味わいを生かした一つ一つの料理を食べながら、家族にもこんな風に、おいしいと思ってもらう料理を届けられるようになりたい、と思いました。たまには外食も楽でありがたいけれど、毎日の食卓に心を込めた料理が出されていたら、それだけで十分幸せをみんなが感じることができます。
 
 丁寧にじっくりと日々の暮らしを創り上げていく、そんな心が伝わる生き方を、木々を見つめながら学んでいきたいと思っています。

清水園/ひろ
 

 


# by hoppo_bunka | 2023-01-14 16:52 | 清水園 | Comments(0)

何もできなかった、と思う日に

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 午後から本格的に降り出した雪が、静かに辺りを埋めていきます。今日はお客様が一人もお出でにならず、閉園時間が刻々と迫ってきます。霙のように湿った雪なので、外で働く方がたは、冷たく濡れて、さぞかし大変だろうな、と想像します。長屋の屋根もまたたく間に真っ白になりました。
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 お客様がいらっしゃるのをひたすらお待ちしていましたら、昔話の『笠地蔵』を思い出しました。
きっと家で待っているおばあさんも、「この寒い中、おじいさんは大丈夫かな。笠は少しでも売れたかな。」、とずっと外を気にしながらおじいさんが帰って来るのを待っていたのだろうな、と思いました。そしてもし、笠が売れたなら、お正月のお餅が少しでも買える、という期待ももちろんあったでしょう、と。
 でも、結果は一つも笠は売れなかった。その売れなかった笠もお地蔵様に差し上げてしまった。自分の被っていた笠までも。
あてにしていた食べ物もない、笠もない、でも、濡れたおじいさんの姿を見て、おじいさんの話を聞いて、「それは良い事をしなさった。」と言える心の持ちように、そんな風に思える人になれたらなぁと思います。

 豊かさとか、幸せって、物の量や質によるものと、心の持ち方によるものの二つがあるのですね。
 清貧に生きるって、私には難しくどういう生き方を指すのかよくわからないけれど、このお話を読んで、このおばあさんのような言葉をかけることができる生き方を指しているのではないかと思いました。

 16時近くになりました。「混んでいるので、今日は取りに来れないので明日来ます。」と電話でおっしゃった宅配便業者の方が、雪の中、走って「間に合いました。」と集荷に来てくださいました。
 一生懸命働く姿は尊い。たとえそれが利益に結びつくことがなくても。それをおばあさんは、感じ取ることがきっとできたから、おじいさんを労わることができたのですね。
 
 自分ができることを精一杯しなくちゃね、と思わされた雪に埋もれた一日でした。

清水園/ひろ




# by hoppo_bunka | 2022-12-15 16:46 | 清水園 | Comments(0)

光を届ける人

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 11月6日(日)、ライトアップ2日目は雨でした。1日目と違ってお客様も少なく、ひっそりとした園内にぽつりぽつりと来園されました。雨は激しく降ったかと思うと、止んだり、また、さっと降り出したりの繰り返しでした。
 止んだのかしら、と思って空を見上げると、真っ暗な闇が広がって、見つめていると吸い込まれるような不思議な感覚に襲われました。
 空と木々だけに囲まれた、しんとした空間にいると、細胞の中の原始の記憶が呼び覚まされるようで、宇宙と繋がっている、と強く感じました。
 しばらくその神秘の中に浸っていました。お客様が来られて書院の方に目を向けると、
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ライトに照らし出された木々の紅葉が、闇の中で美しく広がっていました。

 宇宙と繋がっている、と再び感じたのは、その2日後の11月8日。皆既月食を見ていた時です。
月の側に見える、天王星食も見えるかもしれないと、「見たかったら、おいで。」と夫に誘われて畑に出ました。雲の流れが絶えない日で、月を覆っては流れ過ぎ、次第に赤黒く染まって行く月と、小さな天王星とおぼしき星に目をやりました。
 残念ながら天王星食まではよく分からなかったのですが、月の満ち欠けの起こる空を見つめているのは心地よく、ライトアップの日と同じように、体が宇宙に開放されていくように感じました。
 ハレー彗星、土星の輪、月食、そして冬、夏の星座というように、夫からの贈り物は、いつも深淵な光をもつ神秘の世界です。

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 冷え込むと思っていたら、一気に冬がやってきました。
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 地面に散り敷く落ち葉の上を雪がところどころ覆って季節の移ろい、月日の経つ早さを感じさせます。園内は一気に冬に向かって準備が進められています。この世にあるものは、全て移ろい行くもの。
 
 11月の半ばに、お世話になった大好きな先生が倒れられたという知らせを受け、ショックを受けました。先生のお誕生日にプレゼントを持って、サプライズでお宅に伺おうと思ったその日に、友達から知らされました。コロナ禍で面会もできず、連絡もできない状態で倒れられてから1か月が過ぎています。なんでもっと早く連絡を取らなかったのだろう、と後悔し、もうお会いすることはできないかもしれない、と切ない気持ちでいたら、その切なさを打ち明けた方からお手紙をいただきました。
 そこには、いたわりの言葉とともに、あの年代で今日まで生き抜いた方がたは、思いもよらない力があって、回復され元気になられることもあること、親類の方で、そのような方がいらっしゃることが書かれてありました。その文面に、どれほど救われ励まされたことか。
 そのお手紙は、灯のように悪い方、後悔に沈む心に光を届けてくださいました。

 深淵な神秘の世界が心を解き放つように、心を解き放つ光を灯してくれる人がいる。

 届けられた光を抱きながら12月を生きていきます。

清水園/ひろ

  


 


 



# by hoppo_bunka | 2022-12-03 16:45 | 清水園 | Comments(0)