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積み重ねの数々から

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 今朝は受付でお客様をお待ちしていると、鶯の声が聞こえてきました。足軽長屋の桜も散り、少し寂しく思っていたのですが、のどかでゆったりとした春の趣を感じることができました。
 季節は進み、新しい世界が開かれたのを感じました。

 同じように世界が開かれた、と感じたことが、ここ数日間の間にいくつかありました。

 調べ学習をしている際に、初めて百科事典の素晴らしさを知ることができました。ほとんどインターネットの情報に頼ってばかりで、本を探したりすることを、ずっと何年もしていなかったのですが、今回、百科事典の索引から検索していくやり方を知って、それが、どんどん自分では導き出せなかったワードへの拡がりを見せ、思いがけないことを知り、考えが深まるという体験をしました。
 小学校の時から今まで、全くその素晴らしさを理解していなかった、重たい、家にはない、持ち運ぶことも不便な事典です。しかも、全巻揃っていて、初めて用を成す、貸出し禁止の、今の時代では不便そのもの(電子化されているものもありますが)ですが、この年になって、それによる、知が拡がる喜びを知ることができました。勉強って、面白い、と久しぶりに思えました。最近は、わからない、難しいと心が折れそうになっていたので、尚更でした。一歩踏み出す力をもらう経験でした。

 そこに書かれていることは、多くの研究者が追究し獲得してきたことの蓄積で、その歴史の重みと恩恵を簡単に享受できること、そしてそこに載っている知識は今も、誰かが研究を進め、更新をすることも当然あることなどを考えました。

 普段意識しないことの中に、研究によって新たな世界が開かれることはたくさんあります。
 昨日、本館でボールペンの替え芯を探した時のことです。ペンによって書き心地が違うので、書き心地が滑らかで気持ち良く、速乾性で手も汚れないペンが良いなあと思いました。文具もどんどん改良されて行き、以前と比べて持ちやすく疲れないものなどたくさん開発されています。それを開発するまで、どれだけの時間と人々の研究が行われていたのでしょう。

 本館も、清水園も、新潟分館も、建物が大変古いため、戸や鍵の開け閉めがすんなりとできることが少なく、様々な場所でコツがいります。私はそうしたコツをつかむのに、人と比べると大変時間がかかるため、人より多く教えてもらったり、練習したりしないと、上手くできるようになれません。昔からそうでした。何度も教えてくださる方がいらして、自分でもトライを続けて、ようやくできるようになった時、たぶん、さっとできるようになる方の何倍もの喜びが押し寄せます。些細なことではありますが、本当に私にとっては、新たな世界が開ける瞬間です。

 時間を経て私たちの前にあるものは、皆、それを世に遺した人たちの多くの努力と研究とそこにかける情熱の積み重ねを内包しています。本館、清水園、新潟分館の建物や清水園のお庭も同じです。
 そこから生み出される心地良さと出会うことができる喜びを、次に訪れてくださる方々にも味わっていただく努力を、携わる一員として考え行っていきたいと思います。

 清水園/ひろ

 
 

 


# by hoppo_bunka | 2026-04-14 16:51 | 清水園 | Comments(0)

今を愛する

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 春のお彼岸です。書院に飾られているお雛様も、いくつものお祝い事を見守ってこられたことでしょう。持ち主だった方から離れた今も、書院に来られたお客様を華やかに寿いで迎えてくださいます。人を迎える場所にあるものは、作った方の愛が込められていて、それが自ずと伝わって心地よさを生み出しているのだと感じています。

 その想いを強くしたのは、越後川口サービスエリアのインフォメーションに勤務されている水落裕子さんが制作されている手書きのポスターを見てからです。
 新潟市美術館に展示されていた、それまでに制作されたポスターのクオリティの高さに感動してまもなく、水落さんがこの3月に退職されるという記事が新聞に載り、ぜひその前に最後のポスターを見てみたいと思っていました。
 先日車で上京する機会があり、立ち寄って見てきました。3月の行事祭だよりのポスターの最後には、「長い間ご覧いただき誠にありがとうございました」と水落さんのメッセージも書かれてありました。
 越後川口サービスエリアは、(他の高速道路のサービスエリアもほとんどそうですが)トイレに飾られてある生花も大変綺麗です。ポスターも生花も、訪れる人に心地良さと道中の安全を祈って備えられています。誠実で心のこもった仕事は、真心が伝わるのだ、お手本にしたいと思いました。

 今日は家の椿を受付に飾りました。昨日いらしたお客様が、「夕佳亭の側の桜のつぼみが膨らんでいますよ。」と嬉しそうに教えてくださいました。花はまだだ、と通り過ぎてしまいがちな桜ですが、つぼみの状態でも嬉しいと感じることができるって、素敵だな、と思いました。今を愛することができるって、ある意味無敵だと思いました。

 義母の介護が突然始まって、それまで自由気ままだった生活は、介護が中心の生活に大きく変わりました。そして一番力になってくれたのは長男でした。大学4年の時に心の病を患って家に戻ってきてから15年が過ぎました。当初は彼も私たち家族もそれぞれ苦しい思いをしましたが、少しずつ回復し、今は家族の支えとなっています。
 初めは彼と同年齢の人たちが、独立して家庭を築き上げていくのを見て、このまま家に縛り付けているような人生は可哀想だ。結婚して別の家庭を築いて、、、などが本当の幸せで、彼もきっとそれを望んでいるだろうと思っていました。
 でも、今は、一緒に生活して、笑ったり、助け合ったりできる今の生活を、本当の幸せとは言えないと否定してしまうのは、間違っているのではないかと思うようになりました。こんなに幸せなのだから、その今を十分楽しみ、喜び、味わおうと思いました。たとえ大勢の人が歩む人生とは違ったとしても、人生の責任者は本人であって、その他大勢の他者ではありません。彼が我慢して一緒にいてくれるなら別ですが、これからも、一緒に暮らすことができる機会がある限り、共に人生を楽しんで過ごしていきたいと思います。
 病は完全には癒えていないかもしれませんが、今日まで生き、支えてくれるようになった彼が、同じように、今が幸せと感じているとしたら、この上なく嬉しいです。

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  力が足りず、もう1年勉強を続けることになりました。仕事との両立が厳しいと感じ、やっと終わったと思った1年でしたが、また、締切に追われる生活が始まります。勉強することは、寝る時間を削るので、大変は大変なのですが、これから始まる1年を残念で嫌なものにしたくないな、という思いがありました。むしろ、新しいことにチャレンジできるわくわくした1年に変えたいと思いました。
 わがままを言って、もう1年違うことを勉強します。わからないストレスに潰されそうになったら、清水園のお庭を見て、心を美しさでいっぱいにして、また頑張ります。体がこのお庭に染まったら、無敵です。


清水園/ひろ
 

# by hoppo_bunka | 2026-03-21 13:51 | 清水園 | Comments(0)

推しの力

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 2日連続良いお天気で、お庭も晴れやか。心が一気に開放されます。久しぶりの清水園で、この1週間溜まっていた、情けなさや、やり切れなさは、少し小さくなりました。残りは、お庭の力ではなく、自分でなんとか解消しなくてはなりません。
 笑顔で来園され、お帰りになる多くのお客様と接することができるのも、特効薬です。心を明るく美しく染め上げる空間に勤務できることは、神様からのご褒美で、出来ない事や失敗の多い私の人生では、最高の恩恵だと考えます。

 1週間、東京での大学生活を終えて帰ってきました。宿泊したホテルは町田駅にあり、学生時代に通ったお茶の先生のお宅があった所です。先生ご夫妻がお亡くなりになってから、一度も訪れなかった場所でした。様子も変わっていて面影もありませんでしたが、初釜に振袖で参加したことをとっても喜んでくださったことや、手作りのおかずやお昼ご飯を稽古の度にご馳走して下さった事など次々と思い出され、お会いできなくなったことを大変悲しく思いました。お茶席も人生も一期一会。それを教えて下さった先生です。

 スクーリングのクラスは13名。介護生活真っただ中の方や、事務職、大学講師、アパレル勤務、図書館司書など職業も様々で、北海道から沖縄まで様々な方面から参加がありました。授業を受けて、やはり、自学ではわからないことがよくわかり、共同学習により、新しい見方を教わるなど、対面学習の良さを味わうことができました。

 講師の先生方は、その道30年以上のキャリアをたくさん積まれた方で、お話が大変面白く、興味深く、先生方が紹介してくださった博物館や美術館は、どこも行きたくなりました。お薦めの推しの力の強力さと魅力を伝える力量に感銘を受けました。魅力あるものは、それを伝える人の技量も大きく影響することを実感しました。ものを言えない資料に代わって、その価値を伝える仕事には、表現力と深い知識が必要であることがよくわかり、勉強の量がまるで足りていないこともよくわかりました。博物館の仕事はあまりにも膨大で、ものすごく大変であることもわかりましたし、実務の技量が必要で、今のままでは、なんの力にもなれないことも痛感しました。

 とにかく、現状の自分が酷すぎる、知識も技術もない、そして時間もこの先どれくらいあるか若い人と違って無い、と資格取得に燃えていたはずなのに、あまりにも夢と現実の差があると感じ焦りました。

 そんな悲惨な経験でしたが、嬉しかったこともありました。博物館や美術館を訪れた時に、より深く資料を見つめることができるようになったり、素晴らしさを実感できるものが増えてきたことです。知識は鑑賞にも影響をしている、知るとそのものの価値が一層深く伝わってくるということが実感できました。例えば今の私は刀剣を見ても、全く素晴らしさを感じることができず、違いもまるでわからないのですが、学習や、アニメで刀の魅力を知っている人は、感動しながら見つめることができます。推しの力によって、その対象がもつ世界を深く知ろうとして勉強したり情報を集めて実物を見る経験を積み重ねている人の目と、私の今の目とでは、見えてくるものがまるで違うのでしょう。

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 本館や清水園、新潟分館で勤務しながら学びたいと思うことに、建築、木材、樹木があります。今はまるで見えていないことでも、北方文化博物館を推しとして紹介するのであれば、これらに関する知識は必要であることを今回の実習で改めて感じてきたからです。
 書院や大広間、分館のお座敷がどうしてあんなに心地良いと感じられるのか、日本建築がもつ素晴らしさをもっともっと勉強して、お客様にお伝えすることができるようになりたいと、講師の先生方のお話を伺って思いました。
 建物の中に込められた配慮を読み取れるようになるために、セミナーなどを活用して学んでいきたいと思っています。

 元気をいつも与えてくれる清水園のお庭に、恩返しができるように、折れそうな心を奮い立たせ、無理と諦めずに勉強を頑張ります。

清水園/ひろ
 


# by hoppo_bunka | 2026-02-22 17:45 | 清水園 | Comments(0)

静かに降り積もる

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 静かに雪が降り始めました。周りの音を吸い込んで降り続く時は大雪になります。昨日はこの冬初めて私はスノーダンプで清水園の除雪をしました。除雪をどんどん続けていると、疲れたと感じても「あの一塊を片付けてしまいたい。」と思ってしまうのですが、要注意です。腰や腕を傷めてしまい、今日は既にあちこちが痛みます。もう無理はできないのだから、と言い聞かせながら、少しずつやっていくしかありません。雪国に生まれたからにはみんながそうして冬は過ごすのですから。

 この冬の労苦が都会のお年寄りと新潟のお年寄りの皺の差になるのかな、そうだとすると、私の中にもこの新潟の風土が刻み込まれていくのだろうかと思いました。雪除けはとっても大変だけれど、雪の清水園も秋に遜色なく美しいです。この美しい風土が刻み込まれるなら、雪も人生を培う一要素として受け入れて生きていかなくては、と思いました。
 積雪は、豪雪地と比べれば少ない方なので、そこに住んでいらっしゃる方々からすれば、その覚悟も「まだまだ序の口」と言われそうですが。

 静かに降り積もる雪を見て、いつの間にかこんなに積もっていた、と思った時、近所にある、まもなく閉店するスーパーのことを思い出しました。結婚して今の家に入って以来、ずっと買い物をしていたスーパーでしたが、大手のドラッグストアに合併されることとなり、2月いっぱいで全店が閉店することになりました。それを知った時、とっても寂しい思いになりました。どうしてこんなに残念に思うのだろう、別のスーパーだってすぐ側にあるし、品揃えはむしろそっちの方が多いのに。と、考えたら、レジの方々の応対がとっても心地よかったからだと思い当たりました。
 特定の方と親しかったわけではありません。ただ買い物をしてレジで打ってもらいお金のやり取りをする、それだけの関係です。でも、どなたも感じが良かった。たぶん、そのことが、そのスーパー全体に流れる雰囲気の心地良さを作っていたのだと思いました。
 わずかな時間であっても、その人の持つものは対する相手に伝わっているのだと思いました。言葉を介さなくとも。そしてそれは、その場の空気を創っているのだと思いました。大切に扱っていただいた嬉しさを私はずっとそのスーパーのレジの方々からいただいていたのだと思います。

 私の仕事もレジを打ち、お金のやり取りをするだけです。いつかこの職場を去る時に、今の私がスーパーのレジの方々に思ったような気持ちで、お客様に思っていただけるような仕事をができるようになりたいと思いました。
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 手足が悴む疲労も蓄積する寒い毎日が続きます。それを暖めてくれるのはストーブなどの暖房と、もう一つは人の温かさ。この風土に生きているからこそ、その温もりは人一倍大きく感じられます。
 毎日毎日の暮らしの中で、心に積もり行く温かさを下さったスーパーの方々には感謝をお伝えして、これからも素晴らしいお仕事を続けられますことをお祈りし、私も目指していこうと思います。

清水園/ひろ

 


 


# by hoppo_bunka | 2026-01-25 12:29 | 清水園 | Comments(0)

言霊

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 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
大雪情報でびくびくしながら今年初出勤した清水園でしたが、時折パラパラと霰が降るくらいで、今のところ昨晩のような強風もなく静かな園内です。雪景色を撮りにお客様がちらほらと来園されています。
 私もお庭に挨拶に行ってまいりました。

 今年のお正月はレポートと試験を控えていたため、一応お正月らしいことは整えましたが、気持ち的には楽しめない寂しいお正月でした。受験生を送り出す予備校の追い込み学習のニュースを見ると、自分も遊んではいられない、と勉強しようとするのですが、わからない、書けない、覚えられないの連続で、鬱屈した思いだけが積もります。思いっきり寝たい、遊びたい、と思いながら、だらだらと時間だけが過ぎていき、こんなはずじゃなかった、と思い続けてあっという間に試験の日を迎えました。

 若い頃は、記憶力もあり、(それだけで全て乗り越えてきたのですが)よくわからなくても丸暗記でなんとかやってこれました。でも今はやってもやってもすぐ忘れる。年を取るって、「こんなはずじゃなかった」と思うことを、どんどん受け入れていかなければならなくなることなのだと、身に沁みました。もう無理だ、と、やけになっていた試験の日の朝に、新聞の朝刊のコラムに受験生へのこんな言葉が載っていました。
 「積み重ねた頑張りは気付かないうちに身についていくもの。たとえ模擬試験に成果が表れていなくても、学力は地下水が動くように静かに定着してきている、そう信じよう。その先の春を励みにしたい」

 昨年1年、分からない難しい初めて学ぶことばかりで、レポートも試験も惨憺たる結果ばかりだったけれど、それでも自分の中にそれまで知らなかった多くの学びは入ってきていたなぁとその記事を見て思いました。できないことも、時間がかかることも認めて、あがきながらやっていくしかないと思いました。自分の中の地下水を蓄えよう、と思いました。コラムを書かれた方は、多くの受験生に向けて書かれたのだと思いますが、私には言霊として届きました。

 今日は長女夫婦が子どもとともに帰省します。孫は電車が好きで、この前初めて「電車!」と見て言葉を発することができました。その様子は我が家のみんなを幸せにしてくれて、私も何度も携帯の動画を見て言葉を聞き取ります。物と言葉が一致して、さらにその言葉を発することができるまで、親は繰り返し教え、そしてついに言えるようになる。立った、歩いた、言えた、と幼い子どもの成長は、本人も周りも幸せにします。ここにも言霊がありました。

 試験はやっぱりだめでした。勉強不足過ぎます。結果はまだ出ていませんが、また受けることになると思います。終わった直後はまた駄目だったと泣きそうになりました。でも、携帯を見て、「電車!」の叫びに、にこっと笑うことができました。チャンスがあることをありがたい、と思わなくては。身近な者からだけでなく、見知らぬ人からも言霊を受け取ったのですから。
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 そんな昨日を経て、今日初めて見るお庭です。心がくたくたになっている時は、長い歳月を経て命を営み続けている、こうした史蹟に包まれるのが、私には一番です。生き続けることの苛酷さを含んだうえでの静謐に、為すべきことを黙々と為す営みの価値を教えられます。吹雪舞う中で、凛とそびえ立つ木々を見て、私もそのように、自分の命の炎を燃やしたい、と思います。
 次の出勤日には、木々に真向える私でありたいです。その時どんな言霊をお庭は届けてくれるでしょうか。

清水園/ひろ


# by hoppo_bunka | 2026-01-11 16:16 | 清水園 | Comments(0)