冷たい雨の降る日は、外に出かけるのは億劫になります。寒いし、汚れるし、気軽に出歩くことができません。清水園にいらっしゃるお客様もぐんと少なくなります。雪なら寒くても風情があるのにと、降り続く雨を恨めしく思っていました。
雨が少し止みかけた頃、年輩のご夫婦のお客様が来園されました。園内を回られて足軽長屋に向かわれようとした時、空がもたずに雨が降り出しました。
貸出用の傘を取られると、一つの傘に寄り添って入り、ゆっくりと手を組みながら長屋に向かって歩いていかれました。何かお話しながら、微笑みあって。冷たい雨が降る中だからこそ、組んだ腕の温もりがとっても暖かく感じられるのだろうなぁと思いました。見ている私も幸せのお福分けをいただきました。
幸せそうなお客様のお姿を眺めていると、こちらもうれしくなり、元気が出てきます。来園されるお客様は御家族であったり、お友達同士であったり、お一人だったりとさまざまですが、大切な方とご一緒に、または、大切な思いをもちながら、来園されるのだと思います。
人や何かを大切にしていらっしゃる方々だからこそ、その姿を見て、励まされたり、何かを自分も大切にしたいと思わされるのでしょう。
何かを大切にしたいと思ったときに、その気持ちの向く先に清水園があるのは、私どもにとっては、かけがえのない喜びです。
貸出用の傘で奥様を車まで送られたご主人は、傘を返された後、走って雨の中を車に向かわれました。きっとお客様自身は気付いていらっしゃらないと思いますが、私の心の中も、大切な人が次々に浮かんできて、いっぱいになりました。
清水園/ ひろ