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取りこぼし

 人出の少なくなった街のあちこちで、チューリップの花が咲き始めました。可愛らしいこの花を見て最初に思うのは、昨年取った球根を植えるのを忘れたことです。でも畑を見ると、ちゃんと水仙やチューリップが咲いています。畑の端やバラの枝の間などから。去年球根を取った際に、手が届きにくかった場所です。中には、通り道に敷いたセメントの隙間から芽を出したものや、枯れた鉢の土の捨て場に芽吹いたものもありました。
 「立派な球根」と大切に取ってもらったものと、目立たずに取りこぼされたもの。でも、取りこぼされたものも、手入れをされなくても、しっかり花を咲かせ子孫を残していきます。生き物は成長が良い、早い、悪い、遅い、など多様性があるからこそ、何かの危機に瀕した時に、一斉に滅びることなく、生き続けることができるのですね。自然の中で生きていくものには、それぞれに役目があって、無駄なものや無駄な時など何一つないのだ、と思いました。
 緊急事態宣言を受け、4月20日(月)から5月6日(水)まで臨時休館をすることになりました。この危機を乗り越える日が来ることを願いつつ、今は感染拡大の阻止に向けて休園し、また笑顔でお客様をお迎えできる日を待ちたいと思っております。
 こんなに外に出ることが怖い、と思ったのは私にとっては初めての経験で、生活は圧迫され、苦しい日々が続いています。私の知人も会社が倒産してしまいました。素晴らしいものを提供してくれる力をもつ人だったのに、知人のように人生を大きく変えられた人は、世の中に大勢いると思います。それを知った時は、悲しくて悔しくて、漠然としていたウイルスの脅威がまさに身近に迫ってくるのを感じました。ましてや御家族や知人を亡くされた方の悲しみはどれほど大きく辛いことでしょう。
 でも、こんな苦しい世の中ですが、医療関係者の方々をはじめ感染の恐怖と闘いながら働いていらっしゃる方々も大勢いらっしゃいます。歴史を振り返ってみると、今では克服されているさまざまな病気や、生きていくうえで困難だったことは、今と同じように社会全体が苦しみに耐えながら、少しずつ乗り越えてきたのだと思います。私たちが生まれる前の大勢の人たちが、「こんな思いを自分以外の誰かに味わわせてはならない」、と強く念じて、頑張って頑張ってくれたからこそ、対処法が開発されたり、世の中が住みやすく改善されてきたと思うのです。
 だから今はここで負けるわけにはいかない。
 傷ついた、と思っても、死ななきゃ人生はどんなことがあってもかすり傷。苦しみや悩みの無い場所はお墓の中だけです。今動けなくても、取り上げられなくても、いつか私の役目を果たす時がきっと来る、と信じて、芽吹く日を待つ球根のように内なる力を蓄えていく時が今なのかもしれないと思いました。
 清水園のお庭を造った人たちには、今のこの美しいお庭は見えてはおらず、土や石や小さな苗木を扱いながら、いつかこのように美しい庭園になるだろうと思いを馳せて、作業を続けていたと思います。たとえ自分は見ることができなくても、後世の人々が憩い愛でる庭を造る、その思いが引き継がれて今日までお庭は守られ育ってきました。苗木が大木に成長するまでどれだけの年月がかかったでしょう。「何か月我慢したの?」とお庭の木々に言われそうです。今こそ明日を信じ自分でできることに取り組まなくては。
 皆さまをお迎えできる日が来ることを心から待ち望んでおります。どうぞお元気でお過ごしくださいますように。

 清水園/ ひろ

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by hoppo_bunka | 2020-04-19 17:26 | 清水園 | Comments(0)

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