2020年 05月 22日
魔法の言葉
雨がやみ、鳥の囀りと日差しが降り注いできます。昨日と打って変わって、初夏の気持ちのよい日となりました。
休園中、皆さまはどのようにお過ごしでしたか。我が家では、気軽に外出ができなくなったため、義母が次第にぼんやりと無気力な感じになり、じっと横になってテレビを見ていることが多くなりました。外に出て人と会っていた時は、気持ちにもはりがあったのに、一気に物忘れの度合いが進んだ気がしました。
2分おきくらいに、たった今尋ねたことを繰り返したり、同じ話を初めて伝えるように何回もしたりします。「今言ったでしょ。」とか、「さっきも聞いたよ。」とか、度重なるとついつい口に出してしまいそうな時、ずっと側で聞いていた夫がこんなことを言いました。
「いいね。おかあさん。何度も感動できて。いつだって新鮮に味わえるってことだ。」
その瞬間、義母がにこやかに笑い、私もイライラした気持ちがふっと消えました。
忘れることは、悲しくて、本人を責める否定的なことだと思っていたけれど、こんなふうに見方を変えれば、お互いに厭な言葉を吐くことも聞くこともしなくてすむのだと思いました。言葉の力ってすごいなぁと思いました。
私は家の片付けにはまり、毎日整頓をしては、ゴミを出す、という繰り返しでした。カップをくるんでいた新聞紙の始末をしていたら、文芸欄の短歌が目に留まりました。1988年2月7日の朝日歌壇の近藤芳美選の一首です。
「投石と素手で戦車に立ち向かうパレスチナの里子死すと聞くなり」(愛知県)水野 啓子
詠まれた水野さんが、どんな方で今お元気かどうかも何もわかりませんが、30年以上の時を経ても、言葉は心に深く刺さりました。発した本人から離れても、言葉は生き続けて人を動かす力があると思いました。
あまりに多くのゴミを出し続けたので、収集業者の方にお詫びと感謝の手紙を書き、クッキーとポプリを作ってお渡ししました。新聞で小学生がお手紙を差し上げて喜んでいただいたという記事を読み、自分も普段の何倍もゴミを運んでいただいているので、何かしなければと思いました。最初はびっくりされ、すぐに満面の笑みで「ありがとうございます。」と言って受け取っていただき、その笑顔を見てこちらもとってもうれしくなりました。
笑顔でありがとうと返されることが、こんなに幸せな気分になることなのだと実感しました。
お客様が来てくださった時に、応対するのは、数分しかありませんが、あの時の喜びを思い出し、私も感謝の気持ちをお伝えしたいと思いました。清水園のお庭がゆったりと心地よい空間をお届けするように。
新緑や 透き通る日も やはらかく
雨上がりには、いっそう美しさを増すお庭です。
清水園/ひろ

by hoppo_bunka | 2020-05-22 16:47 | 清水園 | Comments(0)


