2020年 07月 25日
ギフト
「こんなに良いお庭を見せていただいて、本当にありがとうございました。」
閉園間際までいらっしゃったそのお客様は、門を出ると受付にお出でになり、深々と頭を下げておっしゃいました。
そして、「こんな良いお庭でお茶が飲みたい。お茶会はいつありますか。」と尋ねられました。
「例年ですと、お茶会が催されるのですが、今年はコロナウィルスの影響で、まだ開催されていません。市民茶会など、お茶会がある時は、市の広報などに掲載されますので、ぜひお申し込みになって、またいらしてください。」とお伝えしました。
お客様は「ありがとうございました。」とまた深々とお辞儀をされ帰っていかれました。お礼をおっしゃるご様子とお言葉を聞きながら、お礼を申し上げたいのは私のほうですと、胸にあついものがこみ上げてきました。
清水園のような美しいお庭を毎日見ながら、自分はどれだけその美しさを感じ取っていただろうと反省しました。いつの間にか、体中で物事を感じ取ることをやめてしまっていました。あんなに今日は今日の新しい目で物事を見るんだ、決めつけず生まれたての気持ちで心を解き放つんだ、と決意していたはずなのに。
地球の美しさと神秘を感じ取れる人は、たとえ苦労を味わったとしても、決して人生を投げやりに過ごさないように、出会った美しいものを全身で味わうことが出来る人は、それを心に反映させることができると思いました。
とってもうれしかったので、翌日外食してお支払いをする際に、出がけに伝えるのではなく、お店の方の顔をきちんと見て、「とってもおいしかったです。ごちそうさまでした。」と、おいしいものをいただいた喜びをお伝えできるように気をつけました。あのお客様からいただいた喜びを、私もお店の方にお伝えしたくて。
もっと一生懸命に生きよう、そして心のセンサーを磨いていこう、と思いました。
「明日突然目がみえなくなってしまうかのように思って、五感を最大限に使ってください。世界があなたに見せてくれている
全てのもの、喜び、美しさを讃えましょう。 ヘレンケラー」
清水園のお庭を修復した庭匠田中泰阿弥は、「大自然の石を動かし、草木を移し植える時、その一鍬たりともおろそかにして、大地の尊厳をおかしてはならない。」という言葉を残しています。
自然の美しさと尊厳を感じ取れる人に、一歩でも近づいて、お客様にお伝えできるようになりたいです。
清水園/ひろ

by hoppo_bunka | 2020-07-25 16:57 | 清水園 | Comments(0)