北方文化博物館本館で行われた『庭屋一如 目からウロコの鑑賞法』を受講して、お庭やお部屋には、至る所にお客様をおもてなしする工夫が施されていることを改めて知ることができました。清水園で行われた庭園セミナーと合わせて、鑑賞のポイントを知ることでお庭や建物の趣を、一層楽しむことが出来るようになった幸せを感じています。
海面に顔を出しそびえ立つ氷山が海の底に何倍もの大きさを秘めているように、私たちがものごとを真に理解するためには、自分の物差し以外に多角的に見つめることが大切で、自分では思いもつかなかった見方を教えてもらうと、見えなかった世界が開けてきます。
時を超えて届けられているメーッセージは、幸せを寿ぐものや何かにひざまずく心、美を重んじる心などで、それがさまざまな所に施されていることがわかると、その場所に居る心地よさや尊さが更に深まるような気がしてきます。
セミナーを受けて最も身につけたいと感じたのは、見えない世界を感じ取る想像力でした。
清水園の近江八景を取り入れたお庭は、コンピューターなどなく、交通手段が今ほど便利ではなかった昔の人たちは、今の私よりずっと想像力を使って、このお庭から各地の名跡に思いを馳せ、味わっていらしたのだと想像しました。そして、目には見えない、今目の前にあるものよりも更に奥深く崇高な世界の存在を味わうことができた喜びは、どれほど大きなものだったのだろうと思いました。
枯山水から水のせせらぎと涼を感じ取り、中島に神仙の世界を感じ取ることができる想像力。便利になればなるほど、失われていった、この力がもたらしてくれる大切なものを、お庭について学びながら培っていくことができたらと願っています。
たたえたる茶の色のみか一口に空のみどりも海のみどりも 利休
利休の和歌にもあるように、お茶をたてる時は、一服の茶碗の中に、空の緑も海の緑も感じるようにたてる。大自然がこの一碗の中にあると思ったら、その味わいはどんなに生命力に満ちたものとして感じられるでしょう。
人にお茶を差し上げる時は、そのように自然の命をお届けできるようにたて、味わう時は、そうした亭主の気持ちも含めていただくことができる、そんな風に目の前のものの背景にある世界を意識することができるようになると、さまざまなものの中にある、隠れた世界や人の心を感じ取ることができます。芸術家や達人と呼ばれる方がたのようにはなれないかもしれないけれど、教わった場所にアンテナをたて感じ取れるようになっていきたいです。
清水園/ひろ