人気ブログランキング | 話題のタグを見る

今を抱きしめる

 「良いなあ。」と思った後、すぐに家族に会いたくなる、そんな光景を二つ見かけました。
 一つ目は休日の朝のことです。神主さんがお祓いをしている、あ、建前だわ、と思って見ると、若いお父さんと、お母さん、そして二人のお嬢さんが4人一列横になって、手をつないで一緒にお祈りをしていました。その日が待ちに待った日で、夢がたくさん詰まったお家ができる喜びが、見ている私にも伝わってきました。コロナウィルスのせいで、大変だったこともたくさんあったでしょうけれど、ようやくその日を迎えることができたのだなぁと思いました。きっと子どもの頃、私もしたように、このお嬢さんたちも、毎日のようにあの場所に立ち寄って、家族みんなの思いがこもった素敵なお家ができあがるのを、わくわくしながら待つことでしょう。お家が出来上がったら、その時もまた、みんなで手をつなぎながら玄関に入っていくのかな、と想像したら、幸せを分けて頂いたような気持ちになりました。
 
 二つ目は夕暮れの冷たい風が吹く日のことです。高校生の男の子と女の子が二人で一つの赤いマフラーを首に巻いて、寄り添いながら帰っていきました。ざっくりしたマフラーは、手編みでしょうか?私が高校生や大学生の頃も、恋人同士で一緒にマフラーを巻くのが流行りました。彼にマフラーやセーターを編むなんていう事も流行っていて、ペアのものを一生懸命本を見ながら作ったことなど思い出しました。
 この幸せがずっと続くと思っていました。嬉しそうに歩いていく二人のように。
 幸せがずっとずっと続く人もいると思います。私の場合は、永遠に続くことはなかったからこそ、その時の刹那の思いはきらめいて思い出されます。夢中になって恋をしたあの頃。命を燃え立たすような時間が確かにありました。

 建前の家族も、マフラーの高校生も、わずかな時間でしか触れ合うことのない人たちではありましたが、見ているだけで幸せな気持ちになりました。そして、当たり前ではありますが、愛する人といる時間を大切に、一緒にいる時を愛おしんで生きていきたいと思いました。
 城山三郎の亡き妻について書いた『そうか、もう君はいないのか』を思い出しました。今の毎日を大切に愛おしんで抱きしめるように生きていこうと思いました。

 清水園の紅葉が見ごろを迎えた時、来園できない方々に、その美しさをお伝えしようと思っても、圧巻過ぎて、なかなか言葉が出てきませんでした。でも、今ようやくそれをお伝えできるような気がします。それは先に挙げた家族や高校生を見た時に湧き起こってきたのと同じ気持ちを起こさせるものでした。見ていると、嬉しくて、愛する人と一緒に今のこの時を過ごしたい、あるいは、この喜びを届けたい、そして生きていること、今、ここに在ることに感謝をしたい、そんな気持ちです。
 移ろいゆく、散り落ちた紅葉は、永遠でないからこそ、人が希求するものを胸に呼び起こすのでしょう。当園の四季を何度も撮りに来てくださるM様のお写真をいただきましたので、お届けします。今日という日は、皆さまが大切になさっている方々にお気持ちをお伝えすることができる大切な日です。ご一緒にご覧いただけると嬉しいです。

清水園/ひろ

今を抱きしめる_e0135219_15353213.jpg
今を抱きしめる_e0135219_15345173.jpg




 

by hoppo_bunka | 2020-12-04 16:40 | 清水園 | Comments(0)

<< 付加価値 紅葉ライトアップお礼 と 冬期... >>