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覚悟が変える

 
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 梅雨入りのニュースも聞こえ始め、雨の日が多くなってきました。雨で体が濡れ、靴も靴下もびしょびしょに濡れたりする時は最悪です。
 お庭を歩くにも、雨の日よりは晴れた日の方が歩きやすく、旅行で来られる方などは、「せっかくの旅行なのに残念。」と寒そうにさっと回って帰られる方も多いです。

 学生時代、旅行中に物凄い土砂降りに遭遇したことがありました。友達と木曾を旅行した際に、峠を下っている時に急に雨脚が強まって、濡れるどころか、スニーカーの中を雨水がどうどうと流れ落ちていく体験をしました。
最初は濡れたくないと頑張っていたものの、全身ほぼびしょ濡れの状態になった時、友達が「見て、靴の中を水が流れていくよ。こんなの笑うしかないよ。」と言って笑いだしました。
それを見て、お互いに「すごいよ。こんなの初めてだよ。」と笑ったら、何だか悲しい気持ちが吹き飛んで、濡れることなんてもうどうでもよくなりました。

 濡れて当然と思うと、それほど苦にならないというのは、犬を飼い、散歩をするようになってからも思うようになりました。雨が降ろうと吹雪であろうと、一人でだったら、絶対行かないと思う日でも、犬と一緒なら、どんな悪天候でも、外に出ることは全く嫌ではありませんでした。飼う前と飼ってからでは全く違いました。それ以来、外出している時に雨が急に降ってきて濡れることがあっても、結構平気になりました。若い頃を思い出すと、その頃からは考えられない逞しさが身に付いたようです。

 大学に行くまでは、電車に乗るなら指定席でなければ不安でしょうがない、自由席なんて、とんでもない、と思うような子だったのに、何度か上京、帰郷を繰り返すうちに、席がなくてもデッキに新聞紙を敷いて座ればいいや、と思うくらいに図太く平気になりました。
 グリーン車に乗れなくて、新聞紙の上に乗っかっていても、自分という本質は卑下するものなど一つもない、ブランド品や宝石を身に着けていなくても、私は私のブランドを着る、自分で自分を輝かせる、なんて意気込んで思うようになりました。

 濡れたら濡れたで、無かったら無かったでいい、と覚悟を決めると、自分の世界がぐんと広がって、生きやすくなったと思います。覚悟を決めて飛び込むことは、ダメージもあるけれど、そのことに縛られない自由を手にすることにもなると感じています。

 自分の中で何かを超えたと感じるのは、いつだって、覚悟を決めて相手を受け入れる時です。五十沢のキャンプ場の岩場から川に飛び降りた時の体を貫く爽快感も、佐渡の海に飛び込んで体験した薄暗い海の底の静寂も、思い切って恐怖を超えて飛び込んで行ったから味わえた、自分を拡げる体験でした。人間は崖っぷちまでいかないと飛び込むことはできません。崖っぷちというのは、自分を豊かにするチャンスの入り口なのかもしれないと思います。

 自然は覚悟を決めた生き方そのものです。日照りも暴風雨も寒波も、木々は逃げることなく向かい受け止めていく。だからこそ、見る人は、そこに心打たれるものを見出すのだと思います。
 広い空間の中に一人でいると、つい、守ってくれる壁や寄りすがる何かを探そうとして空間を狭めてしまいがちだけれど、身一つでいる覚悟を決めると、四方全てが自分とつながる世界になる。
 いつの間にか守ることの方に傾いていた人生だけど、もう一度全宇宙を背負ってここに立っている、と思うくらい誇らしく大地に立って心を開きたいと思いました。

 雨の肌寒い日に、「こんな日はお庭が本当に美しいんだ。苔がね。」とお越し下さったお客様がいらっしゃいました。木々とつながる生き方をなさっているのだから、お客様にとっては恵みの雨なのだなぁと思いました。

清水園/ひろ

写真提供 M様
 

 

by hoppo_bunka | 2021-05-24 17:11 | 清水園 | Comments(0)

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