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金太郎焼きについて~所蔵品展「北方文化博物館と佐渡」より①

主屋内にある、中奥展示室にて所蔵品展「北方文化博物館と佐渡」がスタートしました(10/3~12/5)。ちょうど世界文化遺産登録へ向けて「佐渡島の金山」の国内推薦が審議されており、登録への応援の意味をこめ、新潟から佐渡文化の魅力を発信しようとするものです。展示室は12畳の小さい空間ですが、初公開の優品が並びますので是非ご覧ください。


今回から展示品について紹介をこのブログで記していきますので、時々覗いてみてください。

第一回目は、佐渡金山の恵みともいえる、金太郎焼の仏花器(初公開)をご紹介します。

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金太郎焼、とは江戸時代の寛政年間(1789-1801)に相川金山の町として栄えていた相川地区で、相川のひと「黒沢金太郎」が佐渡で初めて製作・量産化に成功した焼き物です。

現在の相川小学校のわきを流れる大仏川(馬町川)の上流に富士権現という社がかつてあったのでしょう、そのあたり一帯を「富士権現」と呼びました(今の城址公園付近)。そこの鉄分を豊富に含んだ土を使い、時に相川金銀山で金を採取し精錬した後に出る鉱滓(こうさい)なども釉薬として用いられた特徴があります(カラミ釉と呼びます)。藁灰釉薬の紺色や飴釉の茶色など様々な色味の幅がみられます。
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昭和47年の調査で相川の窯跡「金太郎窯跡」からは、すり鉢や土鍋、甕、片口、水注などが多く発掘され、その多くは相川郷土博物館の3階に展示中です(令和3年10月現在)。今回、北方文化博物館で展示した品は「仏花器」で、飴釉の下地に、藁灰釉がアクセントとして流れていますが、その大きさは島内でも大きなクラスかと思います。この素朴さと釉薬の色合いがとても魅力的ですね。
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金太郎窯の跡は、現在の佐渡市相川地区の羽田村にあり、五郎左衛門町の裏にある坂の階段を登っていくと、途中の右手に表札が現れますが、立ち入ることはできません。また茂みに覆われ全体の視認も難しいですが、最盛期には全長16m余、幅4m8つの焼成室持ったことが確認されています。段丘の斜面を使った「竪ザマ」構造の「倒焔式連房登り窯(※)」で、瀬戸・美濃地方に多い本業窯(陶器専用酸化窯)の形式に類似しているとされます。

(※)焼成室(房)を斜面に複数連ねた窯、いわゆる登り窯。

寛政年間の相川金山は前期・中期・後期にわけると後期の始まりにあたり、金の産出量は最盛期の半分以下で、衰退期といえる時代でした。一揆なども起こり民衆のエネルギーが表に噴出する時代です。金太郎の父は罪人の扱いを受け、その生い立ちは大変苦労した人物と考えられています。


江戸時代の相川の焼き物には二つの流れがありました。ひとつは金銀の精錬時に燃焼目的で用いる送風道具「鞴(ふいご)」の、羽口(はぐち)づくり、つまり鞴の先端で風を送るため筒状になっている突起物を、焼成することから始まる流れです。それが瓦など素焼き物の生産の礎となります。もう一つは、釉薬(ゆうやく)を用いて高温で焼き上げた焼き物をつくる陶器本来の焼成の流れです。金太郎焼きは、ここに位置しました。そして生活用具から茶陶具まで幅広い用途を満たしてゆきます。

一方、今日の佐渡で最も有名な焼き物と言えば「無名異焼(むみょういやき)」があります。赤褐色の硬質な焼き具合が特徴的です。「無名異」とは酸化鉄を多量に含んだ赤土の名前で、佐渡金山の坑内で産出されました(※)。2003年には重要無形文化財の指定を受け、5代伊藤赤水が人間国宝に認定されています。文政2年(1819)伊藤甚平が無名異を用いて焼いた楽焼から始まりましたので、金太郎焼のやや後輩といえる存在です(金太郎焼は無名異を用いません)。しかし金太郎焼が、明治期に下火になってしまうのに対し、無名異焼は明治以降、日常品と美術工芸品との分業を行い、ブランド価値を高めてゆきました。無名異焼が展覧会の入賞や宣伝の効果もあり世界に知られる存在となった一方で、金太郎焼は島内の一般家庭に生活必需品として溶け込み、島民の生活を下支えした窯業(ようぎょう)だったのです。


(※)2千万年前マグマが大噴火していた時代に岩盤の裂け目に200度以上の熱水が繰り返し上昇し、そこに金を含んだ石英が圧縮され金鉱脈ができますが、この石英には二酸化鉄も含有したいました。これが「無名異」です。佐渡金山の採掘とは関係の深い鉱物です。




10/24(日)11時と13時半に展示室で展示説明会を30分間行います。申し込みは不要です。その時間に展示室へいらしてください。佐渡のお話を皆さまと交わせることを楽しみにしています。


by hoppo_bunka | 2021-10-10 15:28 | 本館の展示案内 | Comments(0)

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