2021年 10月 20日
本間琢斎による蝋型鋳金の「茶托」~「北方文化博物館と佐渡」より③
所蔵品展「北方文化博物館と佐渡」より、本間琢斎(3代目)による蝋型鋳金の技法で作られた「茶托」と「茶こぼし」をご紹介します。
本間琢斎(たくさい)は佐渡に蝋型鋳金(ろうがたちゅうきん)技法の礎を築いた鋳金作家です。
柏崎の鋳物師・原得斎の長男として生れ、弘化4年(1847)に佐渡奉行の招聘によりカノン砲鋳造のため佐渡へ渡った縁で沢根五十里の本間家養子となり、佐渡に蝋型鋳金の技術を根付かせました。
蝋型鋳金とは新潟県指定無形文化財の金属工芸技術で、銅製の工芸品を作る際、松脂と蜜蝋で作品の鋳型を造り、それを真土(まね)と呼ばれる土を塗り固め乾燥したのち、釜の中で蝋を溶かし、空洞になったところへ熔解した銅合金(銅・鉛・錫(すず)・亜鉛)を流しこむと、繊細な表現をもつ銅器が完成させるものです。初代本間琢斎(1809-1891)は「班紫銅(はんしどう)」と呼ばれる独特の着色技術を生みだしました。鋳込みと磨きがすんだ銅器を炭で囲い、約800 度で焼き、変形寸前で取り出し急冷すると、赤紫色の斑紋(酸化膜の跡)を生成されるのです。これらの技術は代々受け継がれ、現在は6代目、7代目が佐渡で活躍しています。
本作品は、教師の経歴をもち書画にも秀でた三代目本間琢斎によるものと思われます。各種展覧会で多くの大賞を受賞し、先代以上に本間琢斎の名を高めた人物です。蝋を扱う手も早く、円熟期に入ると蝋と手が一体となったような生き生きとした造形力を獲得したそうです。
by hoppo_bunka
| 2021-10-20 11:25
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