お客様がほとんどいらっしゃらなくなった午後。

目の前に広がるお庭を独り占めです。
静かにゆったりと流れる時間に身を置ける至福のひと時。
そう思ったのですが、こんなに心地よい場所にいるのに、思いっきり幸せと思うことが、なかなかできない。
宮沢賢治の「世界ぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉を思い出しました。
ずっと、ユニセフ、難民救済、国境なき医師団の活動に関わってきましたが、アフガニスタン、シリアに加えて、ミャンマー、そしてウクライナと、緊急支援を求める国がどんどん広がってきています。
穏やかとか、幸せとか、使うのに躊躇すること自体が、既にそうではないことを物語っています。
雨が降り出しました。雨上がりの草木の葉っぱが、瑞々しい新緑の光を帯びるように、世界の悲しみを流し去って心から笑える日が来るといいのに。
先日長岡花火ミュージアムに義母と行って大花火大会を始めることになったきっかけや、打ち上げられるそれぞれの花火に込められた思いを美しい映像とともに学んできました。義母も戦争の体験者です。あの何もかも焼き尽くされた時代を経験して、その頃はきっと思い描けなかったような今を生きています。
幸せを、幸せと感じては申し訳ないと思うのではなく、有難いと抱きしめて生きていかなければならない。そして、その気持ちは、人と分かち合うことによって、より確かに感じ取ることができるのだ、と思いました。
義母が生き残ってくれ、一緒にいてくれたからこそ、私ひとりでは感じ取れなかったであろう、この時間に生きている尊さを味わうことができました。
雨がやみました。いっそう静けさが増したお庭です。そして、遠い国ともつながっている空が広がっています。
清水園/ひろ