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もう一度 

もう一度 _e0135219_14200222.jpg
 ゴールデンウイークに入り、本館も清水園も連日大勢のお客様がいらっしゃいます。その中で何人かのお客様は、仲良く手をつないでいらっしゃいます。そのような方がたをご覧になって、ある方がこんなことを教えてくださいました。
 「あそこに手をつないで歩いていらっしゃる方たちがいらっしゃるでしょう。ああいう方たちを見ると、私はいつもあんな風に相手の方と手をしっかりつないでいらっしゃい、とお伝えしますの。その手の温かさをもう一度味わいたい、と願っても、味わえなくなる時が必ず来ますから。」
 8年前に御連れ合いを亡くされた年輩の方が、今でも、もう一度味わいたい、と願う手の温もり。そんな風に私は夫のことを思いながら今生活をしているだろうか、と愛する方への思いにはっとさせられました。

 そのお話を伺って、家に帰って夫の手を握らせてもらいました。温かくてやわらかい。こんな風に夫の手を握るのは、何年ぶりなのだろうと思いました。当たり前に思ったらいけないのだ。愛する人と一緒に過ごせることを、と思いました。
 
 10代の頃、好きな人と手をつないで歩くだけで、どきどきしました。一緒にいることが嬉しくて、家に帰る時間が来ると悲しくて、いつまでも一緒にいたいと願いました。
 今、毎日愛する人と一緒にいることができる生活を送っているのに、それはもう日常の一部に溶け込んでしまって、当たり前のことに変わっていました。それだけに、「もう一度、あの温かさを味わいたい。」と願う、という年輩の方の言葉に、心動かされました。

 亡くなる前に、ずっと握っていた父の手を思い出しました。亡くなってからも、何度も近寄っては握った手は、次第に硬く冷たくこわばっていきました。
 
 夫の温かい手の感触を受け止めながら、この人との暮らしを大切に味わっていこう、と思いました。失う前に。もっと、ああしておけば良かったと悔やむ前に。どんなに今、そう心掛けても、失った時は、きっと、それでも後悔することがたくさん出て来るに違いないから。一緒にいられることのありがたさを、生きているうちに、しっかり味わい伝えていこう、と思いました。

 限りある人生の中で、愛する方と一緒に過ごすことができる時間は、かけがえのない時間です。次の瞬間には失われるかもしれない。

 今日は雨。連日にぎわっていた園内も静かな時間が流れています。ご家族でいらっしゃる方、お友達や恋人同士でいらっしゃる方を受付で眺めながら、大切な方とお過ごしになる時間を、どうぞ大切になさってください、と祈りました。そしてそんな場所として清水園を選んでいただいたことを嬉しく思いました。

 今日は家族とお夕飯を食べることができそうです。その時間の恵みを思いっきり味わい、喜ぼうと思います。雨の恵みを全身で受け止め艶めく木々のように。

清水園/ひろ


 

 


by hoppo_bunka | 2023-05-06 16:36 | 清水園 | Comments(0)

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