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つながりの視点

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 霧のような雨が止みました。静かに佇む書院です。そこを出て門に向かって歩いていくと、
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足場を組まれた葺き替え工事の門が見えます。

 先日、入口から何度もこの門を見上げていらっしゃる方がいました。工事に興味がお有りなのかとお声がけをしましたら、「うちのおじいちゃんが、この門と足軽長屋の屋根の葺き替えをしたんです。だから、ああ、新しく変えられるんだなぁと、亡くなったおじいちゃんのことを思いながら見ていました。」とおっしゃいました。
 おじいちゃんは、7年前に亡くなられ、仕事を継ぐ方もいらっしゃらなかったので、時折側を通ると、この屋根をおじいちゃんが葺いたんだ、と思ってお子さんに言ったりしながら見られていたそうです。そんな風にご覧になっていたんだと思ったら、全くそういう目で、この門を見ていなかったと気づかされました。

 大雪やカラスのせいで、茅葺屋根はずいぶん傷み、「早く直せるといいなぁ。」とずっと願っていました。清水園の絵葉書に写された頃のように、きれいな屋根に直してほしいと、ずっと思っていました。
 でも、物には歴史があり、携わる人があり、それらを経て、目の前に在る、ということに思い至りませんでした。

 98歳まで虫や花を愛し描き続けた細密画家、熊田千佳慕さんは、枯れた葉を描く時に初めに瑞々しい若葉を描きました。それから、その葉が枯れた色になるまでの月日を想いながら徐々に色を重ねていき、最後に枯れた色になるようにしていきました。目の前の葉っぱにも生の営みがあり、若き日々があり、それらを追いながらその終焉の色を生み出していきます。だからこそ、彼の描く絵は、実物そのもののように、感じられるのでしょう。私なら、初めから、茶色の枯れた色で塗ろうとします。そんな見方をするなんて、と驚きました。

 トヨタ自動車の工場に掲げてある言葉を知った時も、同じように感じました。
 
 「ユーザーは、この一台でトヨタを語る」

 目の前に在るものは、時間や歴史や思いや人など、何かとつながりがあり、そしてそれは、未来の何かにもつながっていく。
 本当の意味で、ものを見るというためには、つながりを意識することが必要なのだと思います。でも、私はなかなか、それが出来ずにいて、表面的なものしか見えないことが多く、人が教えてくれることで、ようやく気付くことが多いです。

 歴史ある場所というのは、本当に学ぶことがたくさんあり、教えていただくばかりだと鈍い心に言い聞かせます。想像力の欠如は、時として悲しみを生む。何度も門を見上げていらした、あの方のように、門やお庭や建物を愛おしんでいきたいと思います。

清水園/ひろ




 

 





by hoppo_bunka | 2023-06-11 17:05 | 清水園 | Comments(0)

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