「100-1はゼロ」 先日それをやってしまいました。本館でお客様をご案内していた時のことです。今までに何度か来館されたことのあるお客様のようでした。ですから私の話は、みんな知っていらっしゃることばかりだったようです。だから、ご自分が知りたいと思われたことを3つ質問されました。そのどれも私はわからず、お答えすることができませんでした。たぶん、これもわからないの、とがっかりされたと思います。建物のつくりや木や石の種類など、私は勉強不足で十分にお答えすることができませんでした。
「サービスというのは、100-1が99ではない。100-1はゼロになる。それだけ気が抜けない。」帝国ホテルの元社長である犬丸一郎氏の言葉が浮かんできました。 勤めてからまだ日が浅いから。マニアックなことまで全て知っているわけではないから。など、グタグタ言い訳も心の中に湧いてきて、愚痴をこぼしたりしてしまいましたが、自分の至らなさは自分が一番身に染みてわかっています。そして、お客様から見れば、勤務年数に関係なく、従業員からは、同質のサービスを受けられるはずですから。
清水園に来て、木や石に興味が湧いたはずなのに、一通りのことを覚えたら、そこで止まっていました。そして自分の拙い応対のせいで、それまで先輩の方々が築き上げてきたお客様との関係を、ゼロにしてしまったとしたら、お詫びのしようがないと切なくなりました。
八代文吉館長は、旬のもの、季節の趣や味わいを大切にされました。その心を受け継いだ対応をお客様にしていただろうかと、今回の失敗で反省しました。 本館も、清水園もリピーターのお客様は大勢いらっしゃいます。一度見たから、もう行かなくてもよい、ではなく、また今年も行ってみようと思い来てくださる方々です。それは、自然というものが、その時々、一瞬にしか味わえない趣をもっているから、今日の命の顔で、お客様をお迎えしているからです。それならば自分も、今日の命の顔で、心で、お迎えしなくては。
わからないことはお時間をいただいたり、逆にお客様から手がかりを教えていただいて、ゼロにしない努力をしなければならないと思いました。美しいものの宝庫に勤めていながら、上辺だけでわかったつもりになっていたことを思い知らされた今回の出来事でした。 愛の反対は無関心。関心をもっと、もっと、拡げ深めなくては。
清水園/ひろ
by hoppo_bunka
| 2023-09-18 17:03
| 清水園
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