
猛暑で今年は来て下さらないのかな、と思っていたシルバー人材センターの庭木の剪定をして下さる方が、「やっとできそうな天候になったので。」と先日連絡を下さり、剪定していただけることになりました。
5月に頼んでから5か月近く経ち、その間仕方なく自分で刈り取ったりしていましたので、最後はもう来られないと思って、仕方ない、これくらいなら、さほど見苦しくもないだろう、と思っていました。
いらした日は勤務日だったので、出かけ間際に「よろしくお願いします。」と言って出たのですが、帰ってきて庭を見たら、見通しが良くなり、すっきりとして、たいへん美しく整って見えました。全く違う。さすがプロ、と思うと同時に、自分には見えない粗がたくさんあって、それを取り除いてくださったのだと思いました。
生け花でもそうです。先生が直して下さると、抜群に良くなることはわかるのですが、直される前に美しくないところに気付かない。どうしてわからなかったのだろうと、美しさにたどり着けない自分の目が、とっても残念です。
木も、花も、プロの方は、その形をじっくりと見て、周りとの間も考慮しながら、そのものが一番美しく見える形状に仕上げることができます。私はまだまだよく見ていないんだなあ、だからそのものの美しさを引き出すことができないんだ、と感じました。
ものを見る、気付く、ということで特化した方々がいらっしゃいます。「ミミックメーカー」と呼ばれる、バイオミミクリーという科学分野で働く発明家の方々です。
バイオミミクリーは、生き物の優れた体の構造やしくみを解き明かし、まねをして問題を解決する方法や工程のことです。自然が私たちの先生になるのです。
絵本『すごい!ミミックメーカー』には生き物をヒントに世界を変えた発明家が10人登場します。彼らはそれぞれ生き物を観察することによって、それをヒントに、例えばヤモリの足から、しっかりとくっつき、剥がしたい時は簡単にはがせるテープを発明し、サメの肌から、抗菌フィルムを、葉脈から光を集積するペラペラの、どこでもつけられる太陽電池を生み出しました。
この太陽電池を私は以前テレビで見たことがありますが、ソーラーパネルと違ってどこでも設置でき、しかも室内の明かりでも発電可能というたいへん優れたものでした。窓に貼っておけば発電できるのであれば、クリーンエネルギーがどんどん生み出されていくことになり、環境破壊も減少させることができます。
生き物の世界は太陽の光からエネルギーをもらい、ゴミや有害な化学物質を出さない。だから私たちは自然を観察することで、今の地球温暖化や環境汚染の解決策を探す必要がある、そして、その解決策を生み出す努力を続けている人たちがいる、ということをこの絵本は教えてくれます。
戦争で都市や自然は破壊され、温暖化による気候変動で、さまざまな場所や生物が危機にさらされている。どんどんおかしくなっていく世の中でも、生き物の一員として、しっかりと自然を見つめている人たちは確かにいて、失敗を恐れず、あきらめず、よりよい世界を創っている。何度も何度も試し、失敗し、でもやり続けた。そこに、これからの世の中を照らし出す、一筋の光が見えた。それを教えてくれる絵本でした。
清水園もこの夏、たくさんの木々を整えていただきました。私には気付かない、粗を整えてくださる作事の皆さまは、みんな神様の執事のような気がします。その手から生み出される草木の形状は、訪れる方々から喜んでいただける空間を構成しています。
よく見て、話しかけ、愛おしんで、この美しい環境から私も何かを真似ていきたいと思います。
清水園/ひろ