盛夏です。蝉の声が一層強く響いています。家に帰れば、連日オリンピックの熱き戦いが放映されています。
世の中が強烈な光と暑さと力に覆われているようなこの時季に、ひっそりと小さな悲しみが訪れました。
小学3年生の頃から、ずっとお世話になっていた歯医者さんが、引退されました。先生のお年は90歳です。引退は、ご年齢から考えれば当然のことかもしれませんが、絶対的な信頼を寄せていた方だったので、とうとうこの時がきてしまった、と悲しかったです。
職場でいつも声をかけてくださっていた方が、退職されたことを知りました。私は本館と清水園を兼務しているうえに常勤ではないので、以前からそういうお話がでていたのかもしれませんが、わかりませんでした。お世話になったお礼をお伝えしたくても、できないままで、とっても寂しく感じています。
ちょっとした贈り物を選ぶのによく利用していたお店が、7月31日に閉店していたことを知りました。明日、そこに行って買い物をしようと思った前日に、そのことをネットで知りました。もっと早くわかっていたら、と思いましたが、何度も来ていたお知らせを、商品の紹介と思い込んでスルーしていた自分が悪いです。
そして一番悲しかったこと。高校の同窓会誌のおくやみ欄に、大切な人の名前が載っているのを見つけました。高1、高2の全ての思い出を共に過ごした人は、亡くなっていました。突然死だったそうです。
今度実家に帰る時が来たら、途中にある、彼の家に寄ってみようかな。今、私はこんな仕事をしているよ。そんな風に何気なく、自分の近況を伝えて、彼の話も聞けたらいいな、なんて思いながら、一度もできませんでした。いつか。いつか行ってみよう。そう思いながら、ずっと後回しにしていました。そして、いつかは永遠にもう来ない。
7月21日に、「ここにあの夏を埋めていこう」と思った場所がありました。私の人生の表舞台には現れないけれど、決して消えることのない、永遠の夏です。お庭を巡っているうちに、ふと、そう感じたのですが、ひっそりとした静けさには、小さな別れが紛れ込んでいたのかもしれません。
ばかだなぁ、私は。どうして明日が来るなんて、安易に思い込んでいたんだろう。確実に私がもっているのは、今のこの瞬間とほんの少しの間の時間なのに。いつか、いつか、いつかって、なんの保証も私はされていないのに。
外は蝉の声が一段と激しくなってきました。4時を過ぎたのに、太陽はまだ、ぎらぎらと照り付けています。
今を全身全霊で生き抜いてみろと、呼びかけられているかのようです。
オリンピックで試合に臨む選手のように、滾る心でお庭に向かうと、いつものように、静かでゆったりとしたお庭が迎えてくれました。
自分の命すらままならぬ人生。相手だってそう。だから人との出会いは一期一会。出会えた方との二度とないかもしれない時間を、大切にしていきたいと思います。
清水園/ひろ