
ハンディファンで暑さを凌ぎながら、顔を火照らせて、高校生のお客様が入園されました。他県からのお客様でした。若い方が入園料を払って見て下さると、嬉しくて応援したくなります。夏の終わりの最後の日曜日、しかもまだまだ灼熱の太陽が照り付ける中、お金を払って清水園を見に来てくださいました。
600円だと、私が欲しいと思う物が3つは買えます。でも、清水園を選んでくださった。偉いなぁと思います。
この方と同じ年の頃、私はお庭は年を取った人達が見に行く物、などと思っていて、全く関心がありませんでした。その時は、その時で、夢中になっていたものが他にあったのですから仕方のないことですが、もう少し早く庭園の美しさや文化財の価値に目覚めていたら、各地を旅行する際に、立ち寄る所がこれまでたくさんあっただろうにと残念に思います。
ですから若い方がお出でになると、素晴らしい趣味を見つけられましたね、と羨ましいような気持ちになります。
『non・no』や『an・an』に載っている女子大生に憧れて、ファッションも生活も古くからの日本文化とは真逆の方向に目が向いていました。家もシャンデリアのある、出窓のある洋室。庭は色とりどりの花が咲き乱れる花壇に憧れていて、平屋で石庭など、問題外に思っていました。今はこんなに良いと思っているものの良さに全く気付きませんでした。
デザイナーブランドへの興味は全くなくなり、今は着物に目が向いています。そして文化財を学ぶことによって、今は博物館の展示物に夢中です。博物館に展示されているものは、先人たちが宝として後世に伝えていきたいと願い守ってきたものですから。それらが遺されることになった、背景を学ぶことによって、その価値は一層深く味わうことができるようになります。誰かが、その価値に辿り着ける道筋を示してくれたから、今日来園された高校生のお客様は、この暑さの中を見に来て下さったのではないかと思いました。
博物館は、現代の「ノアの箱舟」だと思います。後世に遺し伝えていくべきものをたくさん積み込んだ。
若いお客様にもしお時間があるなら、次は来園のきっかけになったことを、ご迷惑でないようにしながらお尋ねしてみたいと思いました。
このお庭も、現代のノアが運んでくれました。
清水園/ひろ