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清水園 セミナーとワークショップの御案内

清水園内にある5つのお茶室は、通常非公開となっており、内部を見ることはできません。
ですが、下記の講座ではお茶室の内部を講師の藤井哲郎氏(庭屋一如研究会)の丁寧なご説明と共に、ご見学頂けます。
1回完結の講座になります。ご都合の良い日をぜひお申込みください。

「日本庭園・茶室のみかたセミナー」ならびに「茶室鑑賞ワークショップ」の詳細は下記に記載いたします。
 人数制限がございますので、ご都合と合わせて清水園(℡0254-22-2659)まで事前にお申込みください。

★「日本庭園・茶室のみかたセミナー」※1回完結
 全国のお庭・お茶室で通用する日本庭園の鑑賞のツボと茶室を味わう手順や着眼点を学びます。清水園の非公開茶室5ヶ所も入室します。

 開催日 4/21(金)、5/20(土)、6/12(月)、7/8(土)
 時間  13:10受付開始 13:30開始 15:45終了 
 定員  各回10名まで(最少開催人数3名)
 参加費 2,500円(入園料を含む)


★「茶室鑑賞ワークショップ」※1回完結
 清水園の非公開茶室5ヶ所に入室し、各茶室の見どころや使い方について参加者各自の感性・経験・知識から意見をシェアしあい深く味わいます。※庭園の見方はほとんど扱いませんのでご了承ください。

 開催日 4/21(金)、5/20(土)、6/12(月)、7/8(土)
 時間  9:15受付開始 9:30開始 11:30終了 
 定員  各回4名まで(最少開催人数2名)
 参加費 3,000円(入園料を含む)

 両講座に参加する場合の参加費 4,800円
 ※同じ日に開催される両講座を受講する場合のみ可能

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# by hoppo_bunka | 2023-03-29 11:22 | 清水園 | Comments(0)

明日が

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 「今日は何日、何曜日?」
この頃、義母は1分も経たないうちに、この言葉を繰り返すようになりました。まるで口癖のように。
初めの頃は、私も、「今、言ったばかりでしょ。」とか、日付と曜日を義母用に書いたボードを見せたりとかして、何度も繰り返されるうちに、イライラしたり、「何曜日!」と大きな声で叫んだりしていました。そして、そのたびに、後でそんな自分がとっても嫌になり後悔しました。
 最近になってようやく、言われたらそのまま返事を普通に返すことができるようになりました。余計な嫌味や感情を付け加えることなく。
 忘れてしまう、という状態を、ようやく私自身が受け入れられるようになりました。何度聞かれても、それを初めて聞いたように、ようやく返すことができるようになりました。不毛なことをし続けていた自分をようやく変えることができました。

 義母はよく物をなくします。置いたり片付けたりした場所を忘れてしまうからです。最近では過去のことや、これからのことが、今現在と混在してしまうこともあります。お医者さんに行っていないのに、行ってきたと言い張ったり、外食して帰ってきた後で、そのことをすっかり忘れてしまって、どこも出かけていないと言ったり。こうして、どんどん忘れていってしまうのだなぁと切なく思っていました。

 そんな義母が1週間忘れなかったことがありました。海老蔵の市川団十郎白猿襲名披露巡業公演です。義母は佐渡生まれのこともあって、歌舞伎や能、文楽などには幼い頃から親しみがありました。ましてや、妻をなくしたあとも二人の子どもを頑張って育てていると同情していた海老蔵です。自分でチケットを取るなどということは、決してしないしできない人ですから、「チケットが取れたから、一緒に見に行こうね。」と誘った時は、びっくりして、あの海老蔵?と、ずっとそのチラシに見入っていました。

 それからというもの、ふと見ると、そのチラシを出してじっと見ている姿をたびたび見かけるようになりました。それに気づいてからというもの、公演の日が近づいてくると、私はどきどきして、しだいに祈るような気持ちで1日1日を過ごしました。
 どうか、明日が無事にやってきますように。義母が具合が悪くなりませんように。歌舞伎の役者の方がたが、どうか無事公演に来てくださいますように。どうか義母が楽しみにしているこの公演を見ることができますように。そんなことを毎日祈っていました。
 前日。いよいよ明日だ。と思いました。そして、当日。ついに義母と一緒に無事公演を見ることができました。

 帰って来た時、家族に「どうだった?楽しんでこれた?」と聞かれた義母は、普段なら、「どこか行ったかい?」と忘れてしまっているのに、その時は、「とっても良かった。いい死に土産ができた。本当に良かった。」と嬉しそうに言って、ずっとまたチラシを眺めていました。無事見ることができた安堵も加わり、私もとっても嬉しかった待ちに待った日が終わりました。

 戦争が止まない地域で過ごしている子どもたちが、朝起きるとにこにこしているので、「どうして笑っているの?」と尋ねると、「あのね、明日は来ないかもしれない。だから、どうか明日も生きられますように、とお祈りをして眠るの。そしてお祈りをして願った明日が来ているから、とっても嬉しくて幸せなの。」と言ったという話を読んだ時のことを思い出しました。
 私が来て欲しいと願い望んだ明日と、子どもたちが願い望んだ明日。
それを毎日目が覚めた時、自分はちゃんと手にしている。明日のことは、来るまで誰にも保証はされていないけれど、今手にした今日は、それを手にすることができない人もいる、プレゼント(present=現在)なのだ。
 義母と公演に行く日の朝、目覚めた時に感じた今日を迎えた喜びのように、純粋に今日という日を抱きしめるような気持ちで生きていきたいと思いました。

 海老蔵を見に行ったことを義母はまもなく忘れてしまうかもしれません。あんなに嬉しさを口に出していても。
 
 お庭を見に行きました。広いゆったりとした空間が静かに流れています。夕佳亭の側の桜は五分咲きです。見上げれば、春の空。

清水園/ひろ

 



# by hoppo_bunka | 2023-03-20 19:09 | 清水園 | Comments(0)

良きものに触れる

 
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 長岡技術科学大学の中川匡弘教授が、燕市にある洋食器製造の山﨑金属工業と連携し、スプーンやフォークの使い心地を、脳波の解析により数値化した、というニュースが新聞に報道されました。それによると、研磨工程の多い「高仕上げ品」は、数百円の商品と比べ、食べ物にすっと入れたり、刺したりした時の感触が、最大で6倍良いとの結果を得たということです。
 このことに関しては、それより前にNHKの番組で取り上げられていて、ゲストの方たちのコメントが、「まるで違う。こっち(高仕上げ品)の方が、断然良い!」と絶賛していたのを見ていたので、本当だったのだ、心地よいという感覚を、ちゃんと数値で実証したのだと思いました。
 差し込む時の入れ心地、口から出す時の抜け感、金属臭など、より良い使い心地を求めて積み上げてきた企業努力が、使う人にしっかり届いて、心地よい、美味しい、といった幸せを生み出していると思いました。

 東南アジアなどで安価な洋食器が大量生産されることによって、燕市の洋食器は大打撃を受けるだろうな、と思っていましたが、さすが不死身の産地と呼ばれる燕市です。品質を向上させることで、安さに対抗する価値で勝負してきました。
 前回Twitterで、清水園を使い心地の良いペンに例えて、心を込めて作られた優れたものには、そのものの価値にプラスして、幸せを与えるという上質な価値がある、というお話をさせていただきましたが、技術の進化は、人を幸せにすることにつながっていて、そこには、それを願い求める、人の熱い思いがあると感じました。

 自分が誰かに届ける(例えば、洋食器や筆記具だけでなく、衣服や眼鏡、マスクなど、)ものは、ただの物ではなく、その人の人生に寄り添うものという考えで、技術革新は進められてきたのだと思います。そうした仕事に込められた思いは、触れる人に伝わって、感動を与えます。そのような仕事を、私もしたい、できたら、と思いました。

 受付でお客様と触れ合うことのできる時間は、ほんのわずかです。でも、口の中にスプーンが入った瞬間は、それよりもっと短い。でも、感動を与えることができる。職人さんたちの努力と技術に比べたら、今の自分は何もしていないのに等しいと思いました。

 燕市は私が育った町です。友達の家の多くは、「みがきや」と言って、家に機械が何台かあり、洋食器を磨く音や型を抜いたり、プレスしたりする音が響いている家でした。子どもの頃は、もの作りに込められた思いなど、全く汲み取れませんでした。スプーンはただのスプーンにしか見えませんでした。
 技術を捨てた町は、滅びます。燕市が、何度も何度も、不況の痛手を受けながらも、今日まで耐えてこられたのは、幸せを与える、という価値を目指し、技術を磨き上げてきたからだと思います。

 清水園に来てくださるお客様は、見ているだけで、その場所にいるだけで、満たされていらっしゃることと思います。お客様がそのまま十分満足されてお帰りになられるように、心して勤めたいと思います。

清水園/ひろ


 

# by hoppo_bunka | 2023-02-26 16:45 | 清水園 | Comments(0)

静観を願う

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 雪晴れの空のもと、光に満ちている園内です。
滝を流れる水音が、春の訪れを感じさせます。まだまだ朝晩の冷え込みは厳しいものがありますが、それでも、日中の陽射しはありがたくて、寒さに縮んだ身体をぐんと空に向かって伸ばしたくなります。
 見上げると青く澄み切った空が広がっています。今日は貴重な一日。この恩恵を身体一杯に受け止めなければ。

 昨日の晩から朝にかけては、痛む足に悩まされながら、どうしてこんな風になってしまったのだろう、あんなに元気に走れたのに。と、我が身を嘆き悲しんでいましたが、憂鬱な悲しみを紛らわしてくれる、明るい陽射しのお庭です。

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 私たちの身体の細胞は、絶えず新しいものに生まれ変わっているといいます。既存のものを破壊することで、新たなものを創り出していくのだと。逆に言えば、破壊することによってのみ、自分をなしうることができるのだと。
 走れる身体を手放して、痛む身体を得た。それもまた人生。そして次はどんな身体に変わるのか。そしていつまで続くのか。新たな自分になろう、なろうとしているのだから、心だけを古いまま、置き去りにしてはいけないと思いました。

 お正月に、大好きな恩師からいただいた年賀状には、「ステージ4のガンで闘病中。静観を願います。」と書かれてありました。
「静観を願う」 先生は、全てを受け入れられて、ガンと向き合っていらっしゃるのだと思いました。先生は今でもずっと、先生で、岐路の振る舞いまでも教えて下さいました。

 生きることを諦めてはなりません。
 先生の声も降り注ぐ光いっぱいのお庭です。
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 清水園/ひろ



 





















# by hoppo_bunka | 2023-02-17 14:14 | 清水園 | Comments(0)

至るまでの道のり


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 国際宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士の若田光一さんが、2度目の船外活動を無事終えたというニュースが3日に入ってきました。船外活動は6時間40分。地上からの指示に従いながら、慎重に作業を進められたということですが、死と隣り合わせの仕事を成し遂げる、その強靭な精神力に感服しました。

 宇宙ステーションに戻った若田さんは、「日本の皆さん、ご支援いただきありがとうございました。国際協力をさらに進め、『和の心』をもってISSを最大限に活用して成果を創出していきましょう」と言われました。
 この『和の心』は2014年にアジア初のISS船長に就任された時にも使われた言葉です。その時若田さんは、就任の挨拶で、「地球最大規模の国際プロジェクトで、大役を任されたのは、日本が築き上げてきた実績と、高い信頼の現れです。
 日本らしい和の心を大切に、相手を思いやり、調和の中から、みんなと協力してやっていきたい。」とおっしゃいました。

 宇宙飛行士として、船外活動を行うためには、どれだけ優れた能力や資質、人間性が必要なのか、私には想像もつきませんが、そんな優れた力をもつ方が、自分が船長という仕事に就いたのは、自分に至るまでの多くの方がたの努力や働き方の素晴らしさのおかげであると言及されていること、そして、人と協調していくことを重んじていらっしゃることに憧れを抱きました。

 仕事をしている時に、初めて会う人に対しても、一緒に仕事をしている人に対しても、どうぞまたこの人と会えますように、という願いを持ちながら仕事をしているだろうか。
 良い成果を出せた時に、自分の努力以外にも、自分を支える礎を作ってくれた名も知らぬ多くの人たちに思いを馳せたことがあっただろうか。と考えました。

 凍った池の周りを巡りながら、この池が凍るまでの道程を考えていたら、人を宇宙までも導くまでに、どれだけ、名も知らぬ方がたの命を懸けた営みがあったのだろうと思いました。薄氷のように、すぐに溶けてしまうものから、頑丈な氷の塊に変わるまでのように。

 後藤新平は、「財を残すは下。仕事を残すは中。人を残すは上。」と言っています。

 この人の命を受けついで生きていきたい、と触れ合う人に思わせる生き方が、世の中を発展させてきました。

 書院の前に立ち、凍った池を見つめながら、今日一日に出会う方がたに、感謝を伝えられる自分だろうか、と思いました。

 どんな心を大切に皆さまは今日お過ごしになられましたか。

清水園/ひろ

 


 

# by hoppo_bunka | 2023-02-04 16:47 | 清水園 | Comments(0)