人気ブログランキング | 話題のタグを見る

前へ

前へ_e0135219_10361876.jpg
 新春を寿ぐ言葉も、差し控えなければならないような、新年の幕開けとなりました。
 被災され、今なお苦しんでいらっしゃる方々が、一刻も早く安心される状況に変わりますことを、心よりお祈りします。
 また、亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

 今日の園内は、1月には珍しい、明るい陽射しが降り注ぎ、ゆったりと静かな時間が流れています。年末直したばかりの入口の橋も、明るく日の光を集めてお客様をお迎えしています。いらっしゃる方々のお気持ちに、少しでも寄り添えることができる園であったらと、願っています。

前へ_e0135219_10495868.jpg
 2日の朝、朝ご飯を作ろうと台所に立ちました。1日はみんなが怖い思いをしたので、早く日常に戻りたい、と感じました。
お味噌汁のネギを刻もうとしたら、タ、タ、タ、タ、タ、と、包丁の切れ味が良く、気持ち良く刻むことができました。見上げたら、お鍋はピカピカに磨かれて輝いています。大晦日に、夫が台所やお風呂場、洗面所、トイレなど、普段気にしていても目をつぶっていたような所々の汚れや不具合を、掃除したり直したりしてくれていたのですが、昨日は仕事に出ていたことや地震もあり、気がつきませんでした。

 嬉しかったです。これが我が家の幸せなんだと思いました。台所は家族の命を育む場所です。私がしてもらったように、私も思いを込めてみんなの力になる料理を作ろうと思いました。トントントン、と動いていた包丁が、タ、タ、タ、タ、タ、に変わる。ほんの些細な事ですが。そして手にしたお鍋が輝いていた、それだけのことかもしれませんが、何があっても、できることから一つずつ、前へ。そう決意した新年でした。

 草野 信子さんの『カレーライス』という詩が思い浮かびました。

 カレーライス        草野 信子

 カレーライスを ひとにめがけて ぶっつけたことがある。
 一瞬泣きそうな顔をみせて そのひとは皿を拾い ごはん粒を拾い ごはん粒を拾い 胸のカレーを拭いた。
 こするほどに黄色い染みがひろがって 食べ汚した幼な子のようだった。
 それから ゆっくりと トレーナーを脱ぎ トレーナーを脱ぎ 裏返して それをまたすっぽりと着たのだった。
 記憶が匂いを放つので カレーライスの日は あの夜私を送る電車の中で「匂うね」と笑ったひとを思い出す。
 ひょいとトレーナーを裏返せば 何もなかったのも同じ。
 くらしとは そのように 許すことなのだと私にもわかった。
 いくつもの いくつもの 夕暮れの中で。

 この詩を最初に読んだ頃には気がつかなかったことがありました。彼は汚れたトレーナーを別のものに替えるのではなく、汚れをそのまま受け入れて着続けたのでした。
 人生には、避けられないような、哀しみや出来事が降りかかってくることがありますが、それを全て受け入れて尚、新しい面を自らが出して生きていく、そんな生き方ができるのだ、と思いました。

 年末に退院した母は、未だに体調が優れず横たわっています。苦しい状態が続いている母ですが、それでも、私は、側にいて、母に触れることができるだけで、十分幸せを与えてもらっています。今日生きることを諦めないでほしいと願っています。
 あなたが生きていてくれるだけで、幸せを感じる人がいる。あなたは他の誰かを確かに守っている。生かしている。

 今朝、被災地から一人、救出されたというニュースが飛び込んできました。人は光をも作ることができます。また一歩前へ。


清水園/ひろ
 


 
 

# by hoppo_bunka | 2024-01-05 12:54 | 清水園 | Comments(0)

メメント・モリ 死を想え

メメント・モリ 死を想え_e0135219_11243283.jpg
 雪の季節を迎えました。ひっそりとした園内は人の想いを深めます。

 今月、人生に大きな影響を与えられた方がお亡くなりになりました。産前産後休暇、育児休業法、男女同一労働同一賃金など、今、私たちが受けている恩恵の基礎となる物事を、先頭に立って行動を起こし、闘い、勝ち取ってくださった方です。また、平和を守る大切さを教えてくださった方でした。
 私は、この方にお会いしたことで、より良い毎日を創っていくために、声をあげ、団結して行動をすることの大切さを学びました。今、当たり前のように享受している物事には、年月をかけて諦めずに取り組んでくださった、多くの方々の努力が源にあります。それを忘れてはならないと思います。思いを引き継ぎ行動を続けていくこと。動くことが叶わなかったら、協力の手段を考えること。
 生きる方向を示してくださった方が切り拓いてくださった道を、次の世代のために、私も延ばしていきたいです。

 あと何年、自分はどんなことができるかと思った時に、家族との時間を大切にしたいと思いました。今まで大きく占めていた職場での時間を、徐々にスライドさせていき、家族に、家での生活に目をもっと向けて使っていこうと思い直しました。
 折しも姉妹で母と旅行する計画があり、とっても楽しみにその日を待っていました。
 明日は温泉に宿泊するという日の真夜中、母は急に具合が悪くなり、救急車で搬送されました。原因がわかり、処置をしていただき、多分もう大丈夫、念のために入院するけれど、明日の午後には退院できるのではないかとみんなで楽観していました。ですが、翌日の午後、緊急手術で1週間から10日の入院となりました。

 今は感染症予防のため、面会は直接できず、具合が良くなったとしても、タブレットでの面会です。術後の医師からの説明を受けた妹が直に見て撮ってくれた、酸素マスクを付けて眠っている写真が唯一知る母の情報です。たとえ目を覚まさなくても、側にいるよと手を握ることもできない。それが辛いです。でも、感染症は術後は命取りになるので、ひたすら回復を祈るばかりです。

 医師である姉の「大丈夫、すべて想定内に起こっていることだから。」という言葉を頼りに、入院している間は、できることは何もないので、いきなりさまざまな手続きや準備に追われた同居していた妹のサポートをしなければと思いました。3人姉が出て行ってしまった後の広い家に、母までいなくなってしまっては、寂しいだろうと思い、そのことも併せて、できるだけ実家に通おうと今しています。
 母の年齢を考えれば、もう、当然のようなことなのでしょうが、わかっていても母が死んでしまうなどということは考えたくありませんでした。

 これからのことを姉妹で話をしていた時に、すぐ下の方の妹が、はっとしたように言いました。
「私、今、これからのことを考えて話をしている。私、ようやく未来のことを考えられるようになったんだ。」

 乳がんの手術をした妹は、それまで、今のことしか考えていなかったそうです。自分は、もしかしたら明日は死ぬかもしれない。今日を生き抜くことで精一杯だったんだと。彼女は時間があると、一人で全国どこでも、旅行に出かけていました。美術館に絵を見に行ったり、温泉に入りに行ったり。
 「どうして、そんなに、思ったらすぐ一人で出かけることができるの。」と尋ねた時、「だって、いつ死ぬかわからないから、死ぬ前にしたいことをしたいって思っているんだ。」と答えるのを聞いて、この子は、ずっと癌と闘い続けていたんだと、本人が味わっている苦しさを垣間見た気がしました。よく頑張って、未来のことを考えることができるようになるまできたのだと、労わってあげたくなりました。

 本当の死が見えないと、本当の生も生きられない。

 多くの木々から、雪解けの雨だれが降り落ちてきています。
 死をもって、完結するのが生なのだから、受け入れるしかないんだよなぁと、空を見上げます。
 ただいま、着信ゼロ。メメント・モリ 死を想え。 それでも、ほっとしている自分がいます。
メメント・モリ 死を想え_e0135219_15255425.jpg
清水園/ひろ

 
 

 

 

# by hoppo_bunka | 2023-12-19 15:34 | 清水園 | Comments(0)

道を示す人

道を示す人_e0135219_13424096.jpg
 ほんの小さな悲しみに、力を奪われてしまうことがあります。孤独を感じている時。自分を守るために、殻に閉じこもってしまいたくなり、ますます自分を負の方向に追い込みます。

 生きていくのは、大変。そんな日もあるさ、と自分を勇気づけますが、負のスパイラルから抜け出すのは、なかなか難しい。

 ところが、今回も、自分を救ってくれることが、ありました。というか、いつもマイナスの方向に陥りそうになる時、なぜかお釈迦様が、カンダタに垂らしてくださった蜘蛛の糸のように、救いの手が差し伸べられるのです。そして、前に進むことができます。

 思えば、いつもそれは本当に偶然に訪れる幸せなことで、「禍福は糾える縄の如し」という言葉を思い出します。
 
 今回は、夕佳亭の側の木に、シロサギがお客様として来ていました。
 「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」  若山牧水

 牧水の歌通りに、孤高で美しい、と思いました。そして事務所に戻って連絡事項に目を通したら、ある方から、清水園に2回目の寄付があったことを知りました。
 その方のお人柄を思い出しながら、ああ、自分もこのように、美しい生き方をしたい、暗闇から人を救い出してくれるような、生きるべき方向を指し示してくれるような生き方をしたい、と心から願いました。
 その方のことを考えたら、恥ずかしい生き方はできない、と思える方に出会えたことは、本当に幸せなことです。
 志を高く、そして美しく、自分の中に、さまざまな感情がたとえなだれ込んだとしても、全部飲み込んで、ゆったりとおおらかな水面を保つ、清水園の大池のようでありたい、と願いました。

 最初のシラサギのお客様からまもなく、雨の中、数名のご来園がありました。寒くてご来園が少なくなる時季ですが、ご厚志をお寄せになり、守って下さる方がいらっしゃる、この清水園に勤められることを幸せに思います。
 人が与える力は本当に大きい。だからこそ、高い志に触れたら、身を正さなくては。

 不幸せ、と思った時のちょっと先には幸せが潜んでいる。

 N様、お元気でいらっしゃいますか。お寄せくださいましたご厚志は、文化財ばかりでなく、小さな私までも救ってくださいました。
 
 温かいお気持ちに、滲む園内です。

道を示す人_e0135219_14454264.jpg
清水園/ひろ

# by hoppo_bunka | 2023-12-15 14:51 | 清水園 | Comments(0)

清水園 休園日ならびに年末年始のお知らせ

清水園の年末年始、ならびに休園日の御案内です。

下記の日程で休園となります。

・12月27日(水)~12月31日(日)(年末休園)

・1月3、10、17、24、31日

・2月7、14、21、28日

(1月、2月の水曜日)


清水園は1月1日から開園いたします。
新しい年を寿ぎながら、皆様のご来園を心よりお待ちしております。

◇清水園 開園時間 9:00~16:30

# by hoppo_bunka | 2023-12-13 11:17 | 清水園 | Comments(0)

経営者

経営者_e0135219_11441438.jpg
 先日4年ぶりに高校の同級会がありました。北方文化博物館と清水園のことを紹介したら、「今度見に行くよ。」とみんなが言ってくれたので、「その時は、私が皆さまをご招待します。」と言って喜んでもらおうと思ったら、「違うよ。払う。払う。むしろ友達だからこそ、倍払うんだ。」と言われました。

 仕事を勇退した人もいれば、まだ続けている人もいます。経営者として働いている人も。そして年金暮らしを迎えた人も。
その言葉を聞いて、みんなそれぞれ、家族や従業員を守りながら頑張って働いてきて、立派な社会人になったんだと、実感しました。
「友達だからこそ、払うんだ。むしろ倍払う。」という言葉に、ある社長さんの発した言葉を思い出し、その方と同級生の一人一人が重なりました。
 
 とっても美味しいと評判のお店にランチを食べに行った時のこと。その社長さんが食べようと楽しみにしていたものを注文したら、「申し訳ございません。売り切れです。」と言われました。私だったら、「せっかくそれを楽しみに来たのに、、、」と落胆を露わにして、店員さんを恨むような顔をして不満をぶつけてしまうと思います。
 でも、その社長さんは、「売り切れ!それは良かったね。おめでとう!」と大きな声で、言われたそうです。

 こんな経営者だったら、心酔して、従業員は俄然頑張って働こうと思うと思います。相手の幸福を心から喜び、祝福の言葉を口に出すことができる。私が同級生一人一人に感じた嬉しさと感謝を、その社長さんは、そのお店の従業員全員に与えて店を出られました。出られる時は厨房にいた者も、総出で、「ありがとうございました。」とお見送りをされたそうです。

 友達だからこそ、応援したい、という気持ちを拡げて、毎日の生活の中で触れ合う人に、頑張りを労う気持ちを拡げていくことができたら、売り切れという心に受けた小さな悲しみを、店員全員から感謝を受ける幸せに変えていくことができます。相手の立場に立って物事を見ることができれば、人は不運さえも塗り替えて、人から感謝を受けることができるのだと思いました。

 同級会では、お酒も二次会のカラオケも、一緒にたくさん楽しんだのに、「お前はいい、もう精算した。」と言ってお金を取ろうとしなかった同級生のみんなに、私だって感謝をお返ししたいと思っています。またみんなで、元気に集まれたら、次はケーキではなく美味しいおつまみを持っていけるように、レシピを開発して頑張ろうと思っています。

経営者_e0135219_13181297.jpg
 武家屋敷を駐車場から写真を撮っていたら、先日テレビで駐車場の誘導をとってもカッコ良くされている方が紹介されたことを思い出しました。白線内に車を誘導する時の姿は社交ダンスのリードを見ている様で、素敵で、しかも思いっきりのおもてなしを受けている、とお客さんは大喜び。「店に入る前から、こんなに素敵なおもてなしを受けることができて感激です。」と話される方がいました。
 大変有名な駐車場係だそうで、ヘッドハンティングを4度受けたことのある社員だそうです。自分がいかに思いっきり自分の仕事を全うできるかを考えて、その誘導方法を考え出されたそうですが、お店の味同様、名物となっていて、抜群の集客力の源にもなっているとのことでした。お店にとって重要な方になっているその方は、いかに誘導という仕事を楽しくできるか、ということを考えて工夫をされた結果、今ではお店の看板としても活躍されています。テレビを見ていて、その飲食店というより、その方にお会いするために、そのお店に行ってみたいと思いました。

 私たちは皆、自分の人生の経営者です。他人や降りかかって来る事に左右されずに、実りある人生を築き上げていく。
どうしたら、思いっきり職務を全うできるか。そして他の人の幸せを重んじて考えることができるか。
 同級生を指針に頑張っていこうと思います。みんな、ありがとう。

清水園/ひろ
 
 
 
 

# by hoppo_bunka | 2023-11-25 16:42 | 清水園 | Comments(0)